冬の台所仕事に、寒仕込みという言葉があります。一年でいちばん寒い「寒の内」に、味噌や酒を仕込む。雑菌が少なく、ゆっくり発酵が進むこの時期は、発酵の黄金期です。そして、薪ストーブの家は、この発酵暮らしと、おそろしく相性がいい。今日は、火のそばで菌に働いてもらう話です。
発酵の悩みは、温度である
パンを膨らませる酵母も、甘酒を作る麹も、味噌を育てる菌たちも、それぞれ好みの温度があります。冬の台所の悩みは、この温度が確保できないこと。パン種は寒すぎて膨らまず、甘酒はヨーグルトメーカーだのみ。ところが、薪ストーブの部屋には、温度のグラデーションが常にあります。天板の端の高温から、ストーブ脇の人肌、少し離れた穏やかな暖かさまで。つまり、菌たちの席が、選び放題なのです。
甘酒は天板、パン種は特等席の隣
実践編を。米麹の甘酒は、おかゆと麹を混ぜて、鍋ごと天板の端(低温の位置)へ。目標は人肌より少し上、熱すぎると麹の酵素が働きを失うので、鍋の位置で調整します。数時間ことこと、とろりと甘くなれば成功。冬の定番にしているお宅は多く、サウナ上がりの一杯にも最高です。パン種の発酵は、ストーブから少し離れた棚やスツールが定位置。ボウルに濡れ布巾をかけて置けば、真冬でもふっくら膨らみます。焼くのはオーブンでも、炉内の熾火でも。休日の朝の、焼きたての匂いは反則級です。(朝ごはんの話は、こちら。)
味噌の国の、寒仕込み
岩手は、味噌の国でもあります。田舎味噌の文化、各家庭の手前味噌。寒の内に大豆を煮て、麹と塩を混ぜて樽に仕込む味噌づくりは、いままた人気の冬仕事です。大豆をやわらかく煮るあの長時間の煮炊きこそ、薪ストーブの天板の独壇場。燃料代を気にせず、半日ことこと煮られます。仕込んだ味噌樽は、火から離れた涼しい場所へ。火のそばは発酵のスタートダッシュに、貯蔵は冷暗所に。この使い分けだけ覚えておいてください。(天板の煮炊きの話は、こちら。)
火と菌の、静かな共同作業
薪の火が部屋を暖め、その熱の余りで、菌たちが甘酒とパンと味噌を育てる。人は薪をくべて、あとは待つだけ。火と菌の共同作業を眺める冬は、暮らしの解像度が一段上がります。岩手・盛岡のD'STYLEは、発酵暮らしのはかどる薪ストーブの設置をお手伝いしています。手前味噌の自慢話、店で聞かせてください。ご相談、いつでもどうぞ。



