灰の使い道の話(こちら)で灰を語りましたが、実はもう一つ、火の副産物があります。消し炭です。そして、その相棒の道具が、火消し壺。江戸の台所の必需品だったこの知恵、薪ストーブの家で今も現役で使えます。今日は、火の再利用の話です。
火消し壺は、酸欠で火を止める道具
火消し壺は、ふた付きの金属や陶器の壺です。使い方は単純で、燃えている熾火や炭を入れて、ふたを閉めるだけ。酸素を断たれた火は数分で消え、あとには「消し炭」が残ります。水をかけて消すのと違って、炭が湿らず、そのまま次の燃料として使える。ここが知恵の核心です。江戸の人々は、竈や火鉢の火を毎晩これで始末し、翌朝その消し炭で火を起こしました。安全な火の始末と、燃料の節約を、壺ひとつで両立していたわけです。
消し炭は、最強の着火補助材
消し炭のなにが良いかといえば、火つきです。一度燃えて水分と揮発分が抜けた炭は、驚くほど簡単に火がつき、すぐ熾火になります。朝の火起こしのとき、焚き付けの上に消し炭をひと握り置いておくと、立ち上がりの安定感がまるで違う。マッチ一本からの着火成功率が、目に見えて上がります。昔の人が消し炭を「付け木の次に大事」としたのは、伊達ではありません。(火起こしの技は、こちら。)
薪ストーブでの、消し炭づくり
作り方は、夜の火の始末のついでです。まだ黒く形の残る燃えかけの薪や大きめの熾火を、火ばさみで火消し壺へ。ふたをして、必ず不燃の床の上、屋外か土間に置きます(壺はしばらく高温になります。ここだけは灰と同じ注意です)。翌朝には、上質な消し炭のできあがり。夏はバーベキューや七輪の火起こしに転用でき、消し炭からの炭火は着火剤いらず。キャンプ好きには、これだけで嬉しい副産物です。
使い切る暮らしの、気持ちよさ
薪は燃やして熱に、燃え残りは消し炭にして火種に、燃え尽きた灰は畑と雪道に。一本の薪を最後まで使い切る流れは、江戸の循環の暮らしそのものです。無駄がないことは、単純に、気持ちがいい。岩手・盛岡のD'STYLEは、こうした火の知恵ごと、薪ストーブの暮らしをお渡ししています。火消し壺のご相談も、店でどうぞ。



