コーヒーの話(こちら)、白湯の話(こちら)ときて、残る主役はお茶です。急須でお茶を淹れる暮らしが、若い世代にも静かに戻ってきています。今日は、火とお茶の話。火の家の茶は、理屈からして、うまいのです。

お茶は、湯の質に正直
お茶の味を決めるのは、茶葉と、湯です。特に湯の温度。玉露はぬるめの六十度前後、煎茶は七十〜八十度、ほうじ茶と番茶は熱々。低い湯はうまみのもとであるテアニンを、高い湯は渋みのもとであるカテキンを引き出す。だから温度を変えるだけで、同じ茶葉が甘くも、きりりとも化けます。この使い分けが、急須の茶のいちばんの勘所です。そして薪ストーブの天板は、温度の違う湯が常備される場所(やかんの話)。しゅんしゅんの熱湯も、少し落ち着いた頃合いの湯も、やかんの置き位置で選べる。湯冷ましの手間が、天板の上では自然に済んでいます。鉄瓶の湯なら、まろやかさのおまけつきです(こちら)。
一煎めと二煎めは、別の顔
急須の楽しみは、一度で終わらないところにもあります。煎茶なら、一煎めはぬるめの湯でうまみを、二煎めは少し熱めの湯で香りと渋みを引き出す。同じ茶葉が、注ぐたびに表情を変えていく。ティーバッグやペットボトルにはない、生きた変化です。湯を注いだら、茶葉が開くまで三十秒ほど静かに待ち、最後の一滴まで注ぎきると、次の一煎も濁りません。この「待つ」時間そのものが、火のある部屋によく似合います。薪のはぜる音を聞きながら、湯気の立つ急須を眺めて待つ。忙しなさから一歩離れる、小さな儀式のような時間です。
自家製ほうじ茶という、香りの遊び
火の家におすすめしたい遊びが、ほうじ茶の自家焙煎です。緑茶の出がらしや、古くなって香りの飛んだ煎茶を、乾いたフライパンで軽く炒るだけ。数分で茶葉が薄い茶色に色づき、あの香ばしい匂いが部屋いっぱいに立ちのぼります。炒りたてのほうじ茶の香りは、市販品の別格上位。天板の穏やかな遠火は、焦がしにくくてこの焙煎に向いています。コーヒー焙煎(こちら)より簡単で、失敗もほぼありません。眠っていた古い茶葉の救済にもなる、一石二鳥の火の遊びです。炒りたてを熱い湯でさっと淹れれば、香りが最も高く立ちます。
サウナには、水出しと麦茶を
サウナ側の相棒は、冷たいお茶です。水出し緑茶は、低い水温で渋みが出ずに甘みだけがゆっくり溶け出す淹れ方で、サウナ上がりの火照った体にするりと入ります。夏の麦茶は、カフェインゼロで水分補給の定番。香ばしさがのどに心地よく、汗をかいた日の常備茶にぴったりです。夜のサウナ後でも眠りを邪魔しません(カフェインの話はこちら)。ほうじ茶と番茶もカフェイン控えめで、夜の締めの温かい一杯に向いています。サウナとお茶は、時間帯で使い分ける相棒同士です。
湯呑みの温度も、味のうち
細かいようで効くのが、器の下ごしらえです。冷えた湯呑みに熱い茶を注ぐと、口に届くころには温度が落ちてしまう。あらかじめ湯呑みに湯を回してあたためておくと、最後の一口まで狙った温かさが続きます。天板のそばなら、器を近くに置いておくだけで自然にあたたまる。小さな一手間ですが、淹れたての香りと温度を、そのまま口元まで運んでくれます。道具を温めてから使う発想は、サウナの下ごしらえにも通じるものです。
一服のある暮らしを
お茶を淹れる数分の「一服」は、暮らしの句読点です。火のある家は、この句読点が打ちやすい家。岩手・盛岡のD'STYLEは、お茶のうまい家づくりをお手伝いしています。店でも、お茶を淹れてお待ちしています。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: No machine-readable author provided. Blanu assumed (based on copyright claims). (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)
