お歳暮の定番といえば、ハムに、ビールに、洗剤。今日はそこに、岩手の薪屋として一石を投じます。相手が薪ストーブの家なら、お歳暮に薪はいかがでしょう。冗談ではなく、本気の提案です。もらう側の本音を、たくさん知っている店として書きます。

お歳暮は、消えものが喜ばれる
そもそもお歳暮は、年の暮れに一年の感謝を伝える習わしです。もとは新年に先祖へ供え物をした風習が、江戸時代に商家の挨拶回りと結びつき、今の贈答の形になったと言われます。昔から喜ばれてきたのは、食べたり使ったりして後に残らない「消えもの」でした。もらった相手に置き場所の気を使わせず、暮らしの中で自然に消えていくからです。薪は、まさにその王道。美しく燃えて、灰になって、消えていきます。しかも、消えるまでのひと冬、毎日きちんと役に立つ。消えものの理想形と言ってよい贈り物です。
贈り物としての薪の、三つの美点
美点を三つ挙げます。一、絶対に使われること。趣味に合わない置き物にはならず、冬の毎日に必ず役立ちます。薪ストーブの家に「薪が多すぎて困る」は存在しません。二、心づかいが伝わること。相手が薪の家だと知って選ぶ贈り物には、「あなたの暮らしを分かっています」という一言が添えられています。三、使うたびに思い出されること。火を入れるたびに「これは○○さんの薪だな」と思い出してもらえる。数週間で消える食べ物より、ずっと長く名前が残る贈り物です。(贈り物の理論は、こちらと小物帖。)
選び方は、乾燥と樹種で
贈るなら、質にこだわりたいところです。鉄則はひとつ、よく乾いた薪であること。生木を贈るのは、寝かせる場所と二年の時間も一緒に贈ることになるので、贈答には乾燥済みの即戦力を選びます。樹種は、火持ちの王様ナラが間違いのない選択です。香りで遊ぶなら、桜やりんごの果樹薪を少し混ぜた「香りの詰め合わせ」が粋です(香りの話)。焚き付け用の白樺の皮や細割りを添えれば、心配りは完璧。きれいに束ねた薪は、見た目にも立派な贈答品の顔をしています。
のしの似合う、無骨な一束
実際、当店でも贈答用の薪のご注文は、少しずつ増えています。新築祝いに、お歳暮に、火のある家への手土産に。「配達先は先方の住所で、のし代わりに一筆」というご依頼もありました。無骨な薪の束にのし紙、というギャップがまた良いのです。配達は当店が承りますから、贈り主は伝票一枚。重い薪を、自分で運ぶ必要はありません。(薪の販売と配達は、こちら。)
本当は、あたたかい時間を贈っている
薪を贈るということは、突きつめれば、あたたかい時間を贈るということです。もらった人は、その薪で、家族と過ごす夜を焚きます。子どもが火を眺める晩、来客をもてなす団らん、ひとり本を読む静かな時間。あなたの贈った一束が、誰かの冬の景色を作ります。物ではなく、ひと冬の火のある時間を届けている。そう考えると、無骨な薪の束が、ずいぶん優しい贈り物に見えてきます。実際、当店で贈答薪を受け取ったお宅から、「焚くたびに贈り主を思い出して、お礼の電話をかけたくなった」という便りをいただいたことがあります。食べ物なら数日で忘れられてしまう感謝が、ひと冬のあいだ、火とともに生き続ける。玄関先に積まれた薪の棚は、その冬じゅう、贈り手の心づかいを毎日そっと伝えてくれます。薪は、もらった人の暮らしに長くとどまる、ゆっくり効くお歳暮なのです。
今年の冬の、感謝のかたちに
お世話になったあの家の煙突を思い浮かべて、今年は薪を贈ってみませんか。岩手・盛岡のD'STYLEは、贈答薪のご相談を承っています。燃やせる感謝状、お届けします。
写真: Christophe Badoux (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



