三大麺の記事(こちら)で「わんこそばは祭り」と書きましたが、そもそも、なぜあんな食べ方をするのか。今日は、わんこそばの正体の話です。結論から言えば、あれは大食い競争ではなく、もてなしの発明でした。

起源は、茹でたてを出し続ける知恵
わんこそばの起源には花巻説と盛岡説がありますが、共通する核はこうです。大勢の客にそばを振る舞うとき、大盛りを一度に出すと、そばは伸びて、つゆは冷める。ならば、一口分ずつ小さな椀(わんこ)に分けて、茹でたてを次々に出せばいい。つまりわんこそばは、そばを最後の一口までうまい状態で食べてもらうための、給仕の技術なのです。「はい、じゃんじゃん」の掛け声は、もてなしの「もっと食べてけ」(岩手の気質の話)が、リズムになったものです。
花巻と盛岡、二つの発祥説
発祥の伝承も味わい深いものです。花巻に伝わる話では、江戸のはじめ、旅の途中で花巻に泊まった南部のお殿様にそばを献上することになった。庶民の食べ物をそのまま差し上げるのは畏れ多いと、椀に少しずつ上品に盛って出したところ、殿様はいたく気に入り、何杯もおかわりをした。それが始まりだと言われます。盛岡にも古くから客をそばでもてなす風があり、どちらの説も根は同じ「もてなし心」です。今では花巻で全日本わんこそば選手権が毎年開かれ、郷土の名物を、笑いの絶えない競技として受け継いでいます。
給仕さんは、間合いの職人
わんこそばの主役は、実は食べる側ではなく、お椀を振る給仕さんです。客の椀が空く瞬間を見切って、すかさず次の一口を放り込む。あの間合い、掛け声、蓋を閉めさせない攻防。熟練の給仕さんの仕事は、テンポの芸能です。ちなみに平均は大人でおよそ五十〜六十杯(十五杯でかけそば一杯分ほど)、百杯を超えると記念の証書がもらえる店もあります。数を競うもよし、味わうもよし。自分のペースで楽しむのが、今の主流です。
薬味という、味の変化球
たくさん食べ進める秘密は、薬味にあります。刻みねぎ、もみのり、まぐろの刺身、鶏そぼろ、なめこおろし、とろろ、大根おろし。店によって顔ぶれは違いますが、この「お供」を一杯ごとに変えて挟むと、味がくるくる変わって飽きが来ません。しょっぱい一杯のあとに甘い一杯、そのあとにさっぱりの一杯。この味変の設計こそ、数を伸ばす本当のコツです。前掛けをして、薬味を選びながら、笑い合って食べる。わんこそばが競争ではなく祭りだというのは、この賑やかさのことなのです。ちなみに、椀に蓋をするまで、給仕さんは手を止めません。満腹で蓋を閉めようとする客と、すきを突いてもう一杯を放り込もうとする給仕さんの攻防は、見ているだけでも笑えてきます。食べ終えたあとに、平らげた椀を高く積み上げ、その塔の高さで健闘をたたえ合うのも一興。数の記録そのものより、あの卓を囲んで笑い合った時間こそが、わんこそばのいちばんのごちそうです。旅の思い出に、家族や友との一卓を、ぜひ一度どうぞ。
食べたあとは、お決まりの流れで
わんこそばの宴のあとは、満腹と興奮でぽかぽかです。サウナは食後二〜三時間おいてから(食事と時間割の話)。遠方の友人を、わんこそば、休憩、家のサウナ、で締める黄金コースは、サ旅岩手編(こちら)でも紹介したとおりです。
もてなしの国の、火の店
一口ずつ、茹でたてを、じゃんじゃん。わんこそばの精神は、客を待たせず、最良の状態で出し続けることです。岩手・盛岡のD'STYLEも、見積もりも薪も蒸気も、いい状態でじゃんじゃんお出しします。ご相談、いつでもどうぞ。はい、じゃんじゃん。



