「風邪っぽいから、サウナで汗をかいて追い出してくる」。昔からよく聞く療法ですが、サウナを商う店として、今日ははっきり線を引かせてください。この言い伝えは、半分だけ本当で、半分は危険です。分かれ目は、タイミング。風邪とサウナの、引き際の話です。

熱が出たら、入らない
まず、はっきりした結論から。発熱しているとき、サウナは禁物です。発熱中の体は、ウイルスと戦うためにエネルギーを総動員している、いわば戦時中。そこへサウナの熱負荷を加えると、体力を余計に消耗させ、脱水を進め、回復をむしろ遅らせます。喉の強い痛み、咳、だるさが本格的に出ているときも同じです。発熱は、体がわざと体温を上げて免疫の働きを高めている、大切な反応でもあります。そこへ外から熱を重ねる必要はありません。風邪のときの正解は、昔から変わりません。水分、栄養、そして布団。サウナ室より、布団の中が戦場です。汗をかいて治す、というより、しっかり休んで、体が自分で治すのを待つ。それがいちばんの近道です。
「ゾクッ」の手前までなら、話は別
いっぽう、「なんだか冷えたな」「人混みで疲れたな」という、風邪の入口の手前。ここでは、サウナは頼れる味方です。体をしっかり温めて、ぐっすり眠る。昔の人が「湯冷めしないうちに寝ろ」と言った、あの知恵の強化版です。体温がしっかり保たれた体は、免疫がよく働くと言われます。ふだんからサウナで汗をかき、よく眠る習慣そのものが、風邪を引きにくい体の土台になる。これが「サウナは風邪に強い」という話の、正しい中身です。(免疫の話は、こちらに詳しく。)
研究も、味方している
この「習慣が風邪に効く」という話には、心強い裏づけがあります。ドイツで行われた研究では、定期的にサウナに入る人たちを半年間追いかけたところ、サウナに入らない人たちより、風邪をひいた回数がはっきり少なかった、と報告されました(一九九〇年、医学誌アナルズ・オブ・メディシン)。一回で劇的に効くのではなく、続けることで、少しずつ風邪に強い体になっていく。地味ですが、これがサウナと免疫の、いちばん確かで、いちばん頼れる関係です。
治りかけの復帰は、焦らずに
では、引いてしまった風邪が治りかけたら、いつからサウナに戻っていいか。目安は、平熱に戻って、食欲が戻って、ふつうに動けるようになってから。さらに一日待つくらいが、大人の余裕です。復帰の第一回は、温度低め、時間短め、水風呂は無しでシャワーに。病み上がりの体は、思ったより体力が減っています。焦って熱い一発を入れると、ぶり返しのもと。「もう治った」と感じてからが、じつは体力の戻りきっていない時期です。少しずつ、体の声を確かめながら、いつものサウナに戻していってください。ひと月ぶりのロウリュが、いつも以上にありがたく感じられるはずです。
いちばんの風邪薬は、日々の習慣
結局のところ、サウナと風邪の理想の関係は、「引いてから」ではなく「引く前」にあります。週に何度かの発汗と深い眠り、湯冷めしにくい体、ストレスの逃げ道。この積み重ねが、冬を無事に越す体をつくります。風邪を引いてから慌てるより、引かない毎日を整えるほうが、ずっと楽なのです。(続ける効果の話は、こちら。)
岩手の冬を、元気に
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写真: fi:User:MPorciusCato (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



