「サウナは冬のもの」。岩手ではそう思っている方が多く、実は春こそもったいない季節です。雪の外気浴の派手さはありませんが、春のサウナには春だけの、静かな名場面がそろっています。今日は、季節の変わり目のサウナの話です。
雪解けの水音は、春だけの音響
三月から四月の岩手、外気浴の椅子に座ると、聞こえてくる音が変わっています。屋根から落ちる雪解けのしずく、側溝を走る水、遠くで鳴き始めた鳥。冬のあいだ雪が吸い込んでいた音が、一斉に戻ってくる季節です。火照った体で目を閉じて、この水音だけを聞く外気浴は、春の数週間しか味わえません(サウナと音の話)。気温も外気浴の適温になってきて、冬は三分が限界だった椅子に、十分座っていられる。長い外気浴の気持ちよさは、春が教えてくれます。
白樺の芽吹きと、ヴィヒタの季節へ
春はまた、ヴィヒタの準備が始まる季節です。白樺の若葉が出そろう初夏、葉の香りがいちばん豊かな時期に枝を束ねるのがフィンランドの伝統(白樺の話)。岩手の山にも白樺は多く、芽吹きを眺めながら「今年はどこで束ねようか」と考えるのは、サウナ好きの春の楽しみです。花粉の季節にサウナの蒸気で鼻がほっとする、という声も店ではよく聞きます。春の体には、春の蒸気が合います。
花冷えの夜は、熱が一段やわらかい
春のサウナ室は、冬と同じ設定でも熱がやわらかく感じられます。外気が上がって、壁も床も冷え切っていないからです(温まりの30分の話)。花冷えの夜、ぬるめの長湯ならぬ、ぬるめの長サウナ。ロウリュを多めに、時間をたっぷり。冬の強い熱とは別の、春の入り方です。サウナ日記(こちら)に季節の欄を作ると、この違いがはっきり見えて面白いですよ。
春の体は、変わり目でゆらぐ
春は、体が冬から夏へと衣替えする季節です。日ごとの寒暖差が大きく、自律神経がその変化についていこうと働きづめになります。なんとなくだるい、寝つきが浅い。そんな春先の体に、サウナの温冷のリズムは、良い呼吸のきっかけをくれます。温まってゆるみ、外気で引き締まり、また温まる。この繰り返しが、季節の変わり目にこわばった体を、少しずつほどいてくれます。冬のように気合を入れず、ぬるめにゆったり。春は、体をいたわる入り方がよく似合う季節です。
夜桜サウナと、春のサ飯
春ならではの楽しみを、もう一つ。夜桜の下の外気浴です。庭や近くに桜があるなら、満開の数日は、椅子を花の見える向きへ。火照った体で見上げる夜桜は、昼の花見とはまるで違う静けさをまとっています。サウナ後の食卓も、春は主役に事欠きません。ふきのとう、たらの芽、こごみ、山ウド。芽吹きの山菜のほろ苦さは、冴えた舌にことのほか沁みます。冬の根菜から、春の山菜へ。サ飯の景色が変わると、季節が一つ進んだことを、舌がいちばんに教えてくれます。山菜のほろ苦さには、昔から意味があると言われます。冬のあいだ縮こまっていた体に、春の芽吹きの苦味が、目覚めの合図を送るのだ、と。理屈はどうあれ、ととのった体で味わう春の初物には、しみじみと季節をありがたく思わせる力があります。日が長くなった春は、外気浴の時間をゆっくり取れるのも嬉しいところ。冬は数分で切り上げていた椅子に、鳥の声を聞きながら、心ゆくまで座っていられる。春のサウナは、時間そのものが少し豊かになる季節です。
一年中が、サウナの季節です
冬の雪、春の水音、夏の夕風、秋の月。自宅サウナは、四季それぞれの入り方ができる、一年もののぜいたくです。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターの設置で、その一年を丸ごとお手伝いします。春からのサウナ計画、おすすめです。
写真: Erkki Voutilainen (Wikimedia Commons, CC BY 4.0)



