八月、岩手の家々に、家族が帰ってきます。お盆です。玄関先の迎え火、仏壇の灯明、久しぶりに全員そろう食卓。もともとお盆は、火の行事でもあります(火と祈りの話はこちら)。今日は、その現代版。サウナのある実家の、お盆の夜の話です。

にぎやかな昼と、持て余す夜
帰省のお盆には、独特の時間の流れがあります。昼は墓参りと親戚とごちそうで、にぎやか。ところが夜になると、意外と手持ち無沙汰です。テレビを見るでもなく、それぞれスマホをいじって、なんとなく解散。せっかく集まったのに、話したような、話していないような。あの「集まったのに薄い夜」を、サウナのある家は、濃い夜に変えられます。特別なイベントを用意しなくても、順番に汗をかいて、外気浴の椅子で夜風にあたるだけでいい。テレビもスマホも手放した時間に、ぽつりぽつりと交わす言葉が、いちばんのごちそうになります。
お盆は、火で迎え火で送る行事
そもそもお盆は、正しくは盂蘭盆会(うらぼんえ)という仏教の行事です。あの世から帰ってくる先祖の霊を、家に迎えてもてなし、また送り出す。玄関先で焚く迎え火は、霊が迷わず帰るための目印であり、最後に焚く送り火は、あの世への道を照らす灯りです。きゅうりの馬で早く帰ってきてもらい、なすの牛でゆっくり戻ってもらう。精霊馬の風習にも、家族の細やかな心づかいがにじみます。火で迎え、火で送る。お盆はもともと、火が主役の家族行事なのです。地方によっては、庭先で焙烙にオガラを積んで焚いたり、盆提灯に灯をともして墓と家を行き来したりと、火をめぐる作法がさまざまに残ります。電気の灯りに慣れた今の暮らしでも、この数日だけは、揺れる炎で先祖を思う。火が、あの世とこの世をつなぐ橋渡し役をつとめる、特別な期間なのです。
兄弟の深夜サウナは、効きます
特におすすめしたいのが、兄弟姉妹での夜サウナです。それぞれ別の街で暮らし、年に数回しか会わない兄弟。居間では親の前の顔になってしまうのが、深夜のサウナでは、昔の兄弟の顔に戻ります。熱い、まだいける、先に水風呂行けよ。子どもの頃の風呂の取り合いの続きのような時間の中で、ぽつりぽつりと、親の老いのこと、実家のこれからのこと、互いの近況の本音が出る。お盆にしかできない、大事な会議です。(裸なら三分で戻れる話は、こちら。)
三世代の、夏の入り方
昼間なら、三世代サウナも夏の楽しみです。おじいちゃんと孫が、低めの温度でゆっくり。上がったら縁側でスイカと麦茶。子どもにとって「実家の夏の記憶」は、こういう細部でできあがります。夏のサウナは水遊びと地続きなので、子どもの導入にも向いた季節です。無理のない温度と時間だけ、大人が見てあげてください。(子どもとサウナはこちら、夏の作法はこちら。)
送り火の夜の、静かな外気浴
そして、お盆の最後の夜。送り火で先祖を見送ったあとの外気浴は、一年でいちばん静かな外気浴です。にぎやかだった数日が過ぎ、親戚も子どもたちも帰っていった庭で、ひとり、夏の夜空を見上げる。岩手の八月の夜は、もう秋の気配をふくんで、風がひんやりと汗を引かせます。虫の声、遠くの花火の名残、天の川。集まれたことのありがたさと、また来年の約束を、静かに噛みしめる時間です。火で迎えて、火で送り、蒸気で締める。お盆の家の火は、ぜんぶひとつにつながっています。
集まりたくなる実家に
「サウナがあるから、今年も帰るか」。そう言わせる実家は、強い実家です。岩手・盛岡のD'STYLEは、家族の集まる家づくりをお手伝いしています。来年のお盆に間に合わせるご相談、いつでもどうぞ。
写真: JIP (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



