秋田の山奥、八幡平の一角に、地面から湯気が立ちのぼる不思議な場所があります。玉川温泉。日本一の強酸性の湯と、世界でも珍しい石で知られ、古くから湯治客が全国から集まってきました。今日は北東北・秋田編、熱と地球のエネルギーを浴びる名湯の話です。
大噴から、日本一の湯が湧く
玉川温泉の源は、大噴(おおぶけ)と呼ばれる噴出口です。一か所からの湧出量は毎分およそ9000リットルとも言われ、単一の湧出口としては日本屈指。しかもその湯は、pH1.2前後という日本一の強酸性。塩酸を含む湯は肌にぴりりと来るほどで、そのまま浸かる湯は薄めて使われます。地球の内側の熱と化学が、そのまま地表に噴き出している。ここに立つと、火山列島に暮らしているのだと、体でわかります。近くの秋田・青森には、酸ヶ湯(こちら)や乳頭(こちら)といった名湯も点在し、このあたりは地熱の宝庫です。
地面に寝る、天然の岩盤浴
玉川温泉のもうひとつの名物が、地熱を利用した天然の岩盤浴です。噴気で温められた地面に、ござを敷いて横たわる。地球の熱が、背中からじんわりと体を温めてくれます。人工の岩盤浴が各地にありますが、その大もとの発想は、こういう火山地帯の地熱浴にあります。地面そのものが温めてくれるという体験は、蓄熱した石が体を温めるサウナストーンの気持ちよさ(体感の話)と、根っこでよく似ています。熱い石、熱い地面、熱い湯。人は昔から、地球の熱を借りて体を整えてきました。
北投石という、世界の宝石
玉川温泉には、北投石(ほくとうせき)という珍しい鉱物があります。長い年月をかけて温泉の成分が沈殿してできる石で、世界でも台湾の北投とここ玉川など、ごく限られた場所でしか産しません。あまりに貴重なため、国の特別天然記念物に指定され、採取は固く禁じられています。地球が気の遠くなる時間をかけて、湯の中でひとつの石を育てる。ソープストーンが火山の営みで生まれた石(香りの話とはまた別の、石の話)であるように、北投石もまた、地球の時間が結晶した宝物です。
湯治は、時間をかけて治す文化
玉川温泉が守ってきたのは、湯治という古い文化です。一泊二泊で慌ただしく浸かるのではなく、一週間、十日と逗留して、繰り返し湯と地熱に体をあずける。自炊をしながらの長逗留は、東北の湯治場に共通する過ごし方でした(湯治の話)。急がず、体の内側の声を聞きながら、少しずつ整えていく。この「時間をかけて治す」という発想は、サウナを一回きりの刺激ではなく、続ける習慣として味わう姿勢とよく似ています。効くから続けるのではなく、心地よいから続け、続けるうちに整っていく。玉川の湯けむりの中には、現代人が忘れかけた、そのゆっくりした時間が流れています。湯治場でのんびり過ごす一週間は、何よりの体のリセットになります。
熱をいただく暮らしを、盛岡から
熱い湯、熱い地面、そして熱い蒸気。北東北の暮らしは、地球の熱と仲良くすることで成り立ってきました。岩手・盛岡のD'STYLEは、その延長線上で、ハルビアのサウナヒーターや薪ストーブという「わが家の熱源」を商っています。玉川の湯治帰りに、家でも熱をいただく暮らしの話を、店でどうぞ。
写真: さかおり (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



