岩手県内の薪ストーブ補助金は、市町村によって上限が5万円から75万円まで大きく開いています。なかでも陸前高田市と釜石市の制度は、ほかの市町村と比べて桁がひとつ違うほど手厚い内容です。二つの市に共通しているのは、国の「脱炭素先行地域」に選ばれていることです。
この読みものでは、脱炭素先行地域とはどのような制度なのか、二つの市がどのような計画で選ばれたのか、そして薪ストーブの補助を受けるにはどの条件を満たす必要があるのかを、各市と環境省の公表資料にもとづいて整理します。店頭でお客様からよくいただくご質問にも、あわせてお答えします。
「脱炭素先行地域」とは
脱炭素先行地域は、環境省が進めている取り組みです。国全体の目標である2050年を待たずに、2030年度までに家庭や事業所など民生部門の電力消費に伴うCO2排出を実質ゼロにする地域を、自治体からの提案をもとに選びます。電力にとどまらず、運輸や熱の利用なども含め、地域の特性に応じて温室効果ガスの削減に取り組むことが求められています。
選ばれた地域には、国から「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」が交付されます。自治体はこの交付金を財源に、太陽光発電や蓄電池、木質バイオマスによる熱利用などを、住民や事業者が導入しやすくなるよう支援できます。薪ストーブやペレットストーブは、地域の木を燃料にして暖房の熱をまかなう設備として、この枠組みに組み込まれています。
国は「2025年度までに少なくとも100か所」を選ぶ目標を掲げていました。環境省によると、2026年2月13日時点で全国45道府県133市町村の102提案が選ばれ、目標に達したため募集は終了しています。これから新たに選ばれる地域はないため、手厚い補助を設けている自治体は全国でも限られることになります。
陸前高田市と釜石市が選ばれた第5回
二つの市は、2024年9月27日に結果が公表された第5回の選定で、そろって選ばれました。この回は全国66の地方公共団体から46件の提案があり、選ばれたのは9件です。岩手県から2件が同時に入ったことになります。
陸前高田市の提案名は「脱炭素と資源循環で実現する農林水産業振興~復興の先の創造的産業振興モデル~」です。地域の新電力会社や金融機関、漁業協同組合など多くの事業者が共同提案者に名を連ねています。釜石市の提案名は「『釜石版サステナブルツーリズム』がつなぐ地域脱炭素プロジェクト」で、観光と脱炭素を結びつけた計画です。どちらも東日本大震災で大きな被害を受けた沿岸の市であり、復興のその先を見すえた地域づくりとして脱炭素を掲げています。
陸前高田市 ― 設置経費の4分の3、上限75万円
岩手県内で最も手厚い薪ストーブの補助です。令和8年度(2026年度)の内容を整理します。
- 制度名
- 新エネルギー設備導入促進事業費補助金
- 補助率
- 設置経費(税抜)の 4分の3
- 上限
- 75万円(薪ストーブ・ペレットストーブとも)
- 機器の条件
- 薪ストーブは新品・未使用で二次燃焼機能があるもの。ペレットストーブは新品・未使用のもの
- 対象者
- 市民、移住予定の方、市内に事業所を設ける事業者
- 申請期限
- 令和8年12月28日(月)午後5時15分まで
- 交付方法
- 市の完了検査のあと、指定口座へ振込み
たとえば設置工事を含めた税抜の経費が100万円であれば、補助額は75万円です。同じ制度の中では、住宅用太陽光発電が3分の2・上限80万円、住宅用蓄電池が4分の3・上限40万円とされており、薪ストーブとペレットストーブは太陽光に次ぐ大きな枠が用意されています。
とくに注意したいのは手順です。陸前高田市は、販売店や施工業者と契約する前に申請し、交付決定を受けてから契約するよう定めており、契約後の申請は受け付けていません。工事は年度内に終える必要があり、完了報告と請求の期限は令和9年3月31日、市は3月10日までの提出を求めています。冬の初めから使いたい場合は、夏から秋にかけて機種と工事内容を決めておくと安心です。
釜石市 ― 設置経費の3分の2、上限41.3万円
- 制度名
- 脱炭素先行地域づくり事業補助金
- 補助率
- 補助対象経費の 3分の2
- 上限
- 41万3,000円
- 申請期間
- 令和8年度は 2026年7月21日〜2027年1月29日
- 対象エリア
- 中心市街地エリア(新浜町・浜町・大町・大渡町・只越町など21の町丁目)
・主な材質が鋼板製、またはこれに類するもの
・本体に板厚4.5mm以上の鉄板を使用していること
・バッフル板を用いた二次燃焼構造で、未使用品であること
・岩手県内に本店・支店・営業所などをもつ販売店や施工業者と工事請負契約などを結んで導入すること
釜石市の補助は、脱炭素先行地域に住所がある方、または同地域に事業所がある事業者が対象です。住宅には事務所や店舗との兼用も含まれます。対象エリアは中心市街地の21の町丁目で、市の公式ページに範囲の地図が掲載されています。お住まいの場所が該当するかを、まず確かめてください。
機器の条件では、主な材質が鋼板製であることと、板厚4.5mm以上の鉄板の使用が求められています。鋳物を主な材質とする薪ストーブは、この条件に合わないと考えられます。同じ鋼板製でも、板厚やバッフル板の構造は機種によって異なります。機種を決める前に仕様書で確認し、判断に迷う場合は市へ問い合わせることをおすすめします。当社でも、仕様の確認をお手伝いします。
上限額は陸前高田市より控えめですが、県内の多くの市町村が設けている10万円前後の補助と比べれば、やはり手厚い水準です。
県内のほかの市町村と比べると
岩手県内の主な補助金を並べてみます。数値は当社が2026年9月時点で各市町村の公式ページを確認したものです。
| 市町村 | 補助率 | 上限 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 陸前高田市 | 3/4 | 75万円 | 脱炭素先行地域 |
| 釜石市 | 2/3 | 41.3万円 | 脱炭素先行地域 |
| 葛巻町 | 1/2 | 40万円 | 令和8年度に引き上げ |
| 田野畑村 | 1/2 | 20万円 | |
| 九戸村 | 1/2 | 20万円 | |
| 盛岡市(住宅) | 1/3 | 15万円 | 先着順 |
| 一関市 | 1/10 | 10万円 |
陸前高田市の75万円は、盛岡市の住宅向け上限15万円の5倍にあたります。国の交付金を財源にできるかどうかが、これだけの差になって表れています。なお盛岡市には、住宅向けとは別に店舗や事業者向けの枠(上限50万円)があります。
岩手県内全33市町村の制度の有無は、補助金のまとめページで一覧にしています。お住まいの地域に制度があるかを、まずそちらでご確認ください。
申請の前に、確かめておきたいこと
補助の金額が大きいほど、手順や条件を一つ外したときの影響も大きくなります。次の四点は、検討の早い段階で確かめておいてください。
- 申請と契約の順番。陸前高田市は、契約前の申請と交付決定が必須です。釜石市の公式ページには契約前申請の定めが見当たりませんが、手続きの詳細は要綱で定められています。どちらの市でも、契約の前に窓口へ確認するのが確実です。
- 機種の条件。陸前高田市の薪ストーブは二次燃焼機能が条件です。釜石市は鋼板製・板厚4.5mm以上・バッフル板付きの二次燃焼構造と、さらに細かく決められています。
- 住所と事業所の所在地。釜石市は中心市街地エリアに住所または事業所があることが条件です。陸前高田市は、移住予定の方や市内に事業所を設ける事業者も対象になります。
- 期限と予算。陸前高田市の申請期限は令和8年12月28日、釜石市は2027年1月29日です。年度ごとの予算にも限りがあるため、余裕をもって準備を始めてください。
陸前高田市や釜石市にお住まいの方、これから移り住むことを考えている方にとって、薪ストーブやペレットストーブを迎えるには恵まれた環境が整っています。脱炭素先行地域の取り組みは2030年度を目標にしており、補助の内容も年度ごとに見直されます。制度があるうちに、計画を具体的に進めていただければと思います。
「自分の住所は対象になるか」「考えている機種は条件を満たすか」を一つずつ調べるのは手間がかかります。当社では、お客様の地域と機種に合わせて、使える補助金と金額、申請の時期まで確認してお伝えします。補助金のしくみ全体については「補助金、知らないと損します」でも解説しています。
※ 掲載内容は2026年10月時点で各市の公式ページを確認したものです。金額・条件・受付状況は変更されることがあるため、申請前に各市町村の公式ページまたは当社へ必ずご確認ください。
参考:陸前高田市 新エネルギー設備導入促進事業 / 釜石市 脱炭素先行地域づくり事業補助金・対象設備の条件 / 環境省 脱炭素先行地域・第5回選定結果