スヴァールバル諸島はノルウェー領で、北緯78度にある。冬の間、太陽は一度も地平線の上に顔を出さない。11月中旬から2月上旬までの約4か月間、昼が来ない。この状態を極夜(ポーラーナイト)と呼ぶ。
中心地ロングイェールビーンの人口は約2,500人。炭鉱町として発展した歴史があり、今は研究者と観光業に支えられている。冬の気温はマイナス15度からマイナス30度まで下がる。
暗闇の中の光
極夜の世界は真っ暗ではない。正午前後には地平線付近が青く明るむ時間がある。「ブルーアワー」と呼ばれるこの薄明が、一日のリズムを作っている。太陽は見えないが、空の色で時間を知る。
家の窓にはキャンドルが灯り、街灯が暖色で統一されている。暗さの中で、人工の光がどれだけ大切かを思い知る。極夜を経験した人は口を揃えて「灯りの見え方が変わった」と言う。
炎という生活必需品
スヴァールバルの多くの住居には暖炉か薪ストーブがある。電力は石炭火力発電所が供給しているが、停電は珍しくない。ストーブは暖房であると同時に、暗い部屋の中で目に見える熱源であり光源でもある。
ここまで極端でなくても、日照時間が短くなる場所では炎の存在感が増す。岩手の冬の日照時間は1日8時間を切る日もある。盛岡の12月は午後4時半に暗くなる。北欧ほどではないが、暗さの中で火を見つめる時間には共通するものがある。
太陽が戻る2月、スヴァールバルでは「ソールフェスト(太陽祭り)」が開かれる。数か月ぶりの陽光を浴びて、住民が広場に集まる。暗い冬を越えた者だけが知る、光のありがたさがそこにある。