ノルウェーやスウェーデンの田舎を走ると、赤い壁の木造家屋が点在している。ファールンレッド(Falu Red)と呼ばれる赤褐色の塗料で塗られたこの家は、北欧の原風景だ。その多くは丸太を横に積み上げて壁を作る「ログ建築」で建てられている。
森が家の材料になる
スカンジナビア半島は国土の大部分が針葉樹林に覆われている。ノルウェーの森林率は約33%、スウェーデンは約69%、フィンランドは73%。まっすぐに育つ松や雲杉(トウヒ)が豊富にある。その丸太を切り出して家を建てるのは、最も合理的な選択だった。
石が豊富な地域では石造りの家が建ち、粘土の多い地域ではレンガが焼かれた。建材は土地が決める。北欧には木があった。だから木で建てた。
丸太の断熱性
丸太は厚みがあるほど断熱性が高い。直径30センチの丸太壁は、それだけで相当な断熱層になる。しかし、丸太同士の隙間から風が入る。昔は苔や獣脂を詰めて隙間を塞いだ。現代のログハウスでは、機械で削った丸太にシール材を挟むことで気密を確保している。
ログハウスが「暖かい」と言われるのは、木の蓄熱性にもよる。木材は石やコンクリートに比べて熱容量は小さいが、触れたときに冷たくない。素足で歩いても木の床は冷たくない。体感の暖かさが違う。
赤い塗料の理由
北欧の家が赤いのは、ファールン銅山(スウェーデン中部)の副産物として出た顔料を塗料に使ったことに始まる。17世紀から使われ、防腐効果もあったため広まった。赤は「飾り」ではなく「保護」だった。塗料の成分で木を腐朽から守りながら、色が風景に溶け込んでいった。
岩手の木の家
岩手にもログハウスを建てる人がいる。八幡平や雫石の別荘地にはログの家が並ぶ。県産の杉や松で建てるケースもある。木の家に薪ストーブを入れると、壁と炎が同じ素材の匂いを共有する。鉄の箱の中で木が燃え、その熱が木の壁に伝わる。家全体が一つの暖かい塊になるような感覚がある。