スウェーデン語で「コーヒーを飲む」という動詞はそのまま「fika(フィーカ)」だ。ただし、フィーカは単にコーヒーを飲むことではない。手を止めて、誰かと話す。あるいは一人で静かに座る。その「休む行為そのもの」がフィーカの本質にある。
1日2回のフィーカ
スウェーデンの職場では、午前10時と午後3時にフィーカの時間がある。会議の途中でも「フィーカにしよう」と声がかかれば、全員が席を立つ。カップを手に休憩室へ移動し、菓子パンやシナモンロールをつまみながら雑談する。仕事の話をしてもいいし、しなくてもいい。
日本人の感覚では「サボっている」ように見えるかもしれない。しかしスウェーデンの労働生産性はG7平均を上回っている。手を止めることが、結果として効率を上げている可能性がある。
コーヒー消費量世界2位の理由
スウェーデンの1人あたりコーヒー消費量は世界で2位か3位を争う。フィンランドと毎年首位を競っている。寒い国でコーヒーが好まれるのは偶然ではない。温かい飲み物が体を温め、カフェインが暗い冬の覚醒を助ける。
スウェーデンのコーヒーは深煎りが主流で、日本のドリップコーヒーよりも濃い。砂糖を入れず、ブラックで飲む人が多い。その苦味を甘い菓子パンで受ける。この組み合わせがフィーカの味になる。
炎の前のフィーカ
薪ストーブを持つお客様から「ストーブの前でコーヒーを飲む時間が一日の中でいちばん好きだ」という話をよく聞く。炎を見ながら温かいものを口にする。誰にも邪魔されない15分。それはフィーカそのものだ。
手を止める勇気。忙しいときほど必要なのに、忙しいときほど忘れる。ストーブの炎は「座りなさい」と言っているようなものだ。