薪ストーブの設置工事が終わり、煙突が屋根を貫いて空に向いている。あとは火を入れるだけ。しかし、新品のストーブにいきなり全力で薪を焚いてはいけない。
慣らし焚きが要る
新しい鋳鉄のストーブには耐熱塗装が施されている。この塗装は高温で焼き付けることで本来の強度を発揮する。最初の数回は弱火で焚き、塗装を徐々に硬化させる必要がある。これを「慣らし焚き」と呼ぶ。
最初の3回は、ストーブの温度計で150度から200度を上限にする。細い薪を少量だけ入れ、30分から1時間ほどで消す。4回目以降から少しずつ温度を上げていく。フルパワーで焚けるようになるまで、5回から6回の慣らしが必要だ。
最初の匂い
初めて火を入れると、塗装が焼ける匂いがする。工場で塗装された耐熱塗料の溶剤が飛ぶ匂いで、体に害はないが、かなり強い。窓を全開にしておいた方がいい。2回目以降は匂いが薄くなり、3回目にはほぼ消える。
「故障ですか」とお客様から電話が来ることがあるが、正常な現象だ。新車の匂いがやがて消えるように、ストーブの匂いも消える。
火入れの日のこと
D'STYLEでは設置工事の後、お客様と一緒に最初の火入れをする。焚き付けの組み方、空気の調整の仕方、ダンパーの使い方を実際にやりながら説明する。マニュアルを読んで覚えるよりも、一度やってみる方が早い。
初めての火が安定したとき、お客様の顔が変わる瞬間がある。ガラスの向こうに炎が揺れて、部屋の空気が変わるのを実感するとき。工事のことも値段のことも忘れて、ただ「いい」と呟く。その瞬間を見るために、この仕事をやっている。